調査・診断・解析技術

管路診断技術

漏水診断技術

漏水調査技術の現状と課題

塩ビ管継手からの漏水 塩ビ管継手からの漏水

 地下埋設されたパイプラインの老朽化は漏水となって表面化し、突発的に表れることも多く、突発事故の件数は増加傾向にあります。これからは突発事故を未 然に防ぐための調査・診断が欠かせません。

 しかし、パイプラインは地中に埋設されているため、外部から直接調査を行えず、また内部からの調査実施には制約 が多く、確立された漏水調査技術が無いのが現状です。このような現状の中で、漏水箇所を精度よく検知する技術の開発が急務となっています。

漏水調査を行う上での留意点

 漏水調査には様々な方法があり、漏水をどういった物理量(例えば音や振動など)で捉えることが最適であるかを考える必要があります。 漏水を捉える物理量を「音」とした場合、調査の精度は漏水音の大きさに依存します。「音」は減衰するので、漏水の音源近くで調査しない限り漏水箇所を見つけることは困難です。

  また、調査する場所も限られますので調査方法によっては発見が困難な場合もあり、調査方法の選定には十分な検討が必要です。そのためには、その施設毎のパイプラインの特性を十分に把握することが重要です。パイプラインの埋設状況、地下水の存在、水圧の大きさ、管径・管種の他に調査や仮設の制限や環境条件(騒音など)等の情報を熟知することで、より精度の高い漏水調査方法を選定することができます。

漏水調査技術一覧

管内目視調査

 

人間が管路内に入って漏水箇所を調査する方法です。

 

 

【特徴・留意点】

  • φ700以下は人間が入ることができない
  • 管内排水が必要
  • 水圧がかからないと漏水が見られないことがあるので、漏水箇所が確認できない場合がある
  • 管の侵入水を漏水個所と判断する場合、地下水の有無、水位高さの確認

 

路面音聴調査

 

 管路の埋設されている路面上から漏水音を聞き取る方法です。

 

 

【特徴・留意点】

  • 漏水音が小さいと漏水検知が困難で、管路の埋設位置が深過ぎたり、周囲に騒音があると難しい
  • 漏水音を聞き分けるには相当の熟練を必要とする
  • 基本的に夜間作業、風雨時は、聞き分けが困難
  • 舗装道以外(砂利道・ほ場下等)では極めて困難

 

音聴法

 

音聴棒を直接管体に接触させ漏水音を聞き取る方法です。

 

 

【特徴・留意点】

  • 漏水音を聞き分けるには熟練を必要とする
  • 調査範囲が2m前後と狭い(漏水規模に依存する)

漏水検知器 漏水検知器

漏水検知器

 

 漏水により発生するシグナル(噴射音や振動)の連続性を判別して、漏水の有無を判定する機器です。

 

【特徴・留意点】

  • 簡便で数秒で漏水の有無を検知する
  • 付帯工廻りの漏水検知には有効
  • 検知精度や範囲は漏水から発生するシグナルの大きさに依存する
  • 周囲に騒音振動があると検知が困難

相関法

 

 バルブ等に取り付けた音波センサにより、漏水音波の到達時間差を解析することで漏水位置を特定する方法です。

 

【特徴・留意点】

  • 長距離の調査が容易に実施可能
  • 漏水音が小さいと漏水検知が困難
  • 管路付帯施設間隔が遠すぎたり、周囲に騒音があると漏水検知が困難
  • 解析を必要とするため、その場で結果を示すことができない
  • 別途、試掘や削孔を行って漏水を直接確認する必要がある

 

AE法

 

 検出波の到達時間差を解析して、漏水位置を特定する方法です。

 

【特徴・留意点】

  • 検出波したデータからAEパラメータを用いて別角度からの分析も可能
  • 高度な解析技術が必要となるため専門技術者が必要となる
  • 解析を必要とするため、その場で結果を示すことができない(結果が分かるまで日数を要する)

トレーサーガス調査

 

 管内にトレーサーガスを充填して、管体漏えい箇所から地上へ現れたガスをガス検知器で検知する方法です。

 

【特徴・留意点】

  • 管内排水が必要
  • ガスを取り扱うため有資格者や許可申請が必要
  • 天候(風雨)の影響を受ける
  • 管径が大きい程、ガスの充填作業時間を要する

テストバンド調査

 

 継手部に管内からテストバンドを設置して圧力低下を測定して漏水箇所を調査する方法です。

 

【特徴・留意点】

  • 口径φ800以上
  • 管内排水が必要
  • 継手からの漏水判別には有効

水中ロボット調査

 

 レコーダを搭載した水中自走式ロボットで、管内から漏水箇所を調査する方法です。

 

【特徴・留意点】

  • 管内状況を把握をする上で有効
  • 水質が悪いと漏水の判別がつかない
  • 画像だけでは漏水現象の判別が困難
  • 操作に熟度を要する

気中ロボット調査

 

 レコーダを搭載した気中自走式ロボットで、管内から漏水箇所を調査する方法です。

 

【特徴・留意点】

  • 調査範囲が限定される(ケーブル長等)
  • 管内排水が必要
  • 急勾配管路での実施は機械能力に依存される
  • 水圧がかからないと漏水が見られないことがあるので、漏水箇所が確認できない場合がある

 

その他調査手法

  • 水質調査(管内水と管路近辺からの湧水を採取、分析し、ヘキサダイヤグラムのパターン比較で湧水=漏水の可能性を判断します)
  • 試掘調査(漏水調査により漏水箇所と想定した場所を目視確認する調査です)
  • 2点間流量測定(流速計の検知精度に依存するため不向きとされていますが、当社では空気弁から管内に超高精度の流速計を挿入して調査を行います)
  • 圧力計調査(圧力の低下量により漏水量の判断、漏水標高位置を特定する調査です)
  • 自律型管内漏水検知システム(管路内部調査用レコーダを内蔵する物体が管路内の水流に乗って移動する間、レコーダが音響を記録し漏水箇所を特定する調査方法です)

 

 調査時にパイプライン施設状態を変化(通水停止状態、管内加圧状態)させて、漏水調査と組み合わせることで、より精度の高い漏水検知が可能になります。

主な業務実績

令和元年度 大利根用水国営施設機能保全事業 新宿幹線用水路等施設機能診断調査業務(管内目視調査、水張り試験)
ストックマネジメント技術高度化事業 坂井北部地区漏水調査実証試験業務(相関法、ハイドロフォン、音聴法)
国営造成水利施設保全対策指導事業 母畑地区支線用水路機能診断業務(圧力計調査、水張り試験)
ストックマネジメント技術高度化事業 氷見地区漏水原因調査業務(水張り試験、相関法、ハイドロフォン、音聴法、試掘調査)

衝撃弾性波法

中小口径の管体の劣化を内部から定量的に診断できます。

図:調査イメージ 図:調査イメージ

 従来のテレビカメラ調査による診断は定性的になりがちで、判定にも個人差が出てきます。衝撃弾性波検査ロボットを利用することにより、管体の劣化を定量的に診断することができ、非開削による診断調査が可能です。

 

 

機能診断への活用利点

写真:検査ロボット 写真:検査ロボット

 衝撃弾性波検査ロボットによる調査内容は、衝撃弾性波法によるもので、管内からの調査でハンマーによる打撃で弾性波を発生させ、これを受信センサーで検知した受振周波数を解析して管体破損やひび割れを判断します。

ピケスト協会正会員

写真:管内調査状況 写真:管内調査状況

 

 当社は、本技術を取り扱うピケスト協会正会員です。(ピケスト協会HP:http://www.pqest.org

本技術のデモや技術講習についてお問い合わせください。

主な業務実績

ストックマネジメント高度化事業 パイプライン(ACP管)診断技術調査業務
国営造成水利施設保全対策指導事業(香川用水地区)計画策定その2業務

内径変形診断

管渠の内径や変形量を定量的に把握します。

写真:診断ロボット(ピケスト協会HPより) 写真:診断ロボット(ピケスト協会HPより)

 傘骨状の8本のアームを移動させて、内径・変形を定量化します。(左写真参照)

 高性能なジャイロ式姿勢検知装置を付加して管路の3次元計測が可能になりました。これ らの機能により、既設管の呼び径・内径違いによる更生管の皺(シワ)の発生、樹脂管の正確な扁平たわみや不陸蛇行を定量化することができ、更生管の品質検 査や樹脂既設管の経年変化診断に利用できます。

写真:作業状況(ピケスト協会HPより) 写真:作業状況(ピケスト協会HPより)

当社は本技術を取り扱うピケスト協会正会員です。

(ピケスト協会HP:http://www.pqest.org

本技術のデモや技術講習についてお問い合わせください。

非定常流解析

管内圧力の実測と非定常流解析によって管水路システムの挙動を調査します。

写真:管内圧力の実測状況 写真:管内圧力の実測状況

 管内圧力を実測するとともに、実測時の流況を非定常流解析で再現します。

 

 非定常流解析によるシミュレーションによって、異常発生原因の究明、経年変化による水理機能の低下など、管水路システムを水理機能の面から評価します。

(詳細: パイプライン非定常流解析技術

図:実測値と解析結果の対比 図:実測値と解析結果の対比

主な業務実績

ストックマネジメント技術高度化事業 水理機能等調査手法確立業務